作曲をするとき、ある一定の音階に色を感じます。それが、何か特別なこととは思ってなく、みんな、同じようなことを感じているんだと思っていました。だから、誰にも話しませんでした。
ピアノを習うと習得しなければならない音階は24調ありますが、その中でも#系の音階と、b系の音階があります。いつの頃からか、b系の音階を好んでいることがわかりました。その中でもDbメジャーの音階が好きで、特定の色を感じます。それはオレンジ色。ピアノで弾くとオレンジ色が頭に広がります。
そして、それは自分の奥深い感情と結びついています。
また、ある、ほのかな香も感じます。作曲家ラベルや、シマノフスキーに私は香りを感じます。そのそこはかとない優美で、少しエロチックであったりまた神秘的であったり、まるでベルギー象徴派の絵を見ている時と同じ気分になるのです。
そう言った感覚を共感覚というのだ、と知ったのはかなり後でした。
共感覚
共感覚(きょうかんかく、シナスタジア、英: synesthesia, 羅: synæsthesia)は、ある1つの刺激に対して、通常の感覚だけでなく 異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象をいう。
Wikipedia
共感覚は文字や数字に色が付いて見えたり、音を聞くと色が見えたりするなど、通常の感覚に加えて別の感覚が無意識に引き起こされる現象のことです。 多くの種類があり、文字や数字に色を感じる「色字」、音を聞くと色を感じる「色聴」などがあります
- 文字や数字に色がついて見える(色字)
- 音に色を感じる(色聴)
- 味に形を思い起こす
- 痛みと色がリンクしている
- 色を見ると音を感じる
これはほんの一部で150種類以上あると言われています。
共感覚を持つアーティスト
有名なハンガリーの作曲家フランツ∙リストにまつわる逸話
”そこの音は もう少し青っぽくならないかな?”
ロマン派のアイドル的存在だった作曲家&ピアニストフランツ・リストは、オーケストラが自分の曲を演奏しているのを聞いて突然 そのような注文をつけた、という逸話が残っているそうです。
また、ロシアの作曲家、アレクサンドル・スクリャービンは色共感覚を持っていたことで知られています。彼が作曲した『プロメテ-火の詩』の初演時には、鍵盤と様々な色の照明を連動させた「色光ピアノ」を使用する予定だったものの、故障が起きて失敗したという逸話があります。
ロシアの画家カンディンスキーも有名です。
1911年に描かれた「印象III(コンサート)」は彼がコンサートで現代音楽の作曲家シェーンベルクの音楽を聴いた後であると言われています。彼は共感覚の持ち主で、トランペットの音に黄色を感じると彼自身語っています。
目に見える形や既存の価値観にとらわれず、物体の輪郭はなくなり、精神的なもの、感覚的なものを自由に色彩と形で表現するのが彼のコンセプトでした。
共感覚は特別?
割と小さかった頃、多分、七、八歳の頃ですが、ある日学校から帰って、母に、担任のブラウン先生の名前はおかしい。だってこの名前は緑だから、って言ったんです。母は急にこのことを心配し出して、そんなことはこれからは絶対言ってはいけないよ、と言い聞かせました。
ジョン・ハリソン 著 松尾香弥子 訳 (2006),『共感覚 もっとも奇妙な知覚世界』新曜社.
23人に1人はいるとされる共感覚。また、私のように疑問を持たず、ごく自然に、さまざまな感覚の中に生きている場合もあります。
「他の子と違う」、「頭がおかしい」などと決めつけないで、この共感覚の話を知っていたら理解してあげることができます。
そして、そのメリットでもある、記憶力や芸術性を自由に伸ばしてあげることを意識してあげることが大切と言えるでしょう。アートは感じたものを自由に表現することの素晴らしさを、見せてくれます。それはまた、その人が生きるという証で、誰か他の人が変わってあげることのできない、唯一無二の世界なのです。
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