自然の音の癒し
重い病気の時、死を想像してしまう時、死が迫っていると感じた時、その、底知れない恐怖と孤独は耐え難いものがあります。窓から差し込んでくる光さえ、うっとうしく、普段,好きだった食べ物も身体が受け付けず、身体は鉛のように重く,呼吸が浅くなっていた時、一瞬にして肺に酸素が入っていくことを感じることができたのは、海の波の打ち寄せる音を聞いた時です。
いきなり、重い話でしたね。
ここまでシチュエーションが重くなくても、森や山に行き、小川のせせらぎや枯葉を踏む音に、日常のイライラや、緊張が次第にほぐれ、いつの間にか笑顔になっていることは誰にでも経験があるでしょう。
自然とコンタクトできない人
自然とのコンタクトが上手くいかないことと、自分自信と上手く付き合えないことには共通点があるように思います。委ねられないということです。
10歳か11歳の頃でした。私はトラウマとして、40年間引きずることになった事件に遭遇しました。ここでは、その内容については触れないことにしましょう。なぜなら人にとってのトラウマというのは他人が聞いてもピンとこないのが普通だからです。
もちろん、トラウマになってしまう事件は、千差万別、大事件に遭遇したり、両親と別れたり、とさまざまなのですが、実は他人には、自分が経験していないため、理解し得ない部分があるのは否めないことなのです。
なので、その内容より、トラウマはその人の人生にどういう爪痕を残し、どのように解消していくのか、が大切になります。なぜなら、同じようなことを体験しても、それぞれが解消しなければならない課題は人によって違うからです。
私が解消しなければならなかったことは、人間不信でした。誰も信じられなくなってしまったということでした。
その事件前までは、人とも普通の距離で、付き合っていました。どちらかというと、相手に色々話したいという気持ちから、どちらかというと、人と話すことが好きだったのです。また泥んこ遊びが好きで、自転車で風に吹かれるのが好きでした。真夏の夜の風の匂いや、冬の雪野原、雨の中を傘もささずに雨を感じるのが好きでした。
ところが、その事件の後、私の中から自然と人が消えてしまったのです。
閉じたのは、本来の自然と繋がっている自分、ということだったのでしょう。鎧を身につけた私は自然の匂いも、光も、風も感じなくなってしまっていました。
それから40年。人生のさまざまな経験から、木が私を見守ってくれている、と感じ、風が私を後押ししてくれている、と感じることができるようになったのは、自分を私自身が肯定することを少しずつ始めたおかげでした。
本当の自信とは、自然に身を委ねられること
人を信じられない状態というのは、ある種の闘争・逃走・防御という、緊張状態の連続になります。
人を信じられない状態は、自分も信じていないということになり(鏡の原理)、存在の全てを信じないことになります。
そんな緊張状態で暮らしていた私ですが、時には波が浜辺に打ち寄せる音や、ろうそくの火の揺れ、木漏れ日、電車の揺れに、心地良さを覚え、神経質で、いつもハイな私がすぐに眠くなってしまうことは救いでした。
どうして普段は眠れないのに、電車に揺られると眠れるのだろう、と思う反面、あまり追求することなく過ごしていたある日、
この
”1/fゆらぎ”という言葉が目に入ったのです。
ただ、この聴き慣れない言葉は、私にとっても最初はピンとこなくて、かなり前にブームになっていましたし、CDや本で心が落ち着くといった宣伝から、身体に何か影響するものがあるという認識はありました。
“1/fゆらぎ”ってなに?
1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)とは、パワー(スペクトル密度)が周波数 f に反比例するゆらぎのこと。ただし f は0より大きい、有限な範囲をとるものとする。1/fゆらぎと言われているものは、1/fゆらぎを持つノイズであり、1/fノイズとも呼ばれています
というもので、理解するには、物理学を学ばなくてはなりそうです。
ただ、どうも
物理学者の武者利光氏による研究で
自然界の1/fゆらぎ音を聴くと脳内がα波の状態になり、人間の生体にリラクゼーション効果をもたらす。音響振動数のゆらぎが生体リズムのゆらぎと同じ音楽は、人に快適感やヒーリング効果を与えると考えられる。
Wikipedia
と発表されました。どうやら、規則正しい音とランダムで規則性がない音との中間の音らしいのです。
実際、自然現象においても見ることができ、具体例としては人の心拍の間隔、ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、小川のせせらぐ音、目の動き方、木漏れ日、蛍の光り方、扇風機の設定、スカートの揺れ、髪の揺れなどがある。また物性的には、金属の抵抗、ネットワーク情報流が例として挙げらます。
Wikipedia
日常生活はゆらぎが減っている
現代の私たちは自分の生体リズムではなく、時計が示す時間に従って行動しています。
手作りの製品から工場で生産される規格品へ、野菜は大きさを揃えて出荷され、森林は伐採されて公園になり、街路樹は等間隔に植えられ、ゆらぎを失いつつあります。音楽の世界でも、カウントにぴったり正確に作ることや、楽譜通りにテンポに揺るぎがない演奏をいい演奏とする傾向が見られたりします。
森林浴に行ってみたり、農家直販売の不揃いの野菜を購入してみたりすると、違いがよくわかると思います。工業の規格によって大量生産されている人工物もゆらぎがなくなっている一つの原因で、正確性はプラスに働くこともありますが、ゆらぎという面ではマイナスになることが多くあります。
“1/fゆらぎ”を利用してリラックス時間を作ってみる
もしも日常生活を送っている上で、疲れや医者に行くほどのものではない不調を感じていたら、また、集中し手仕事や勉強をしたい時、リラックスをしたい時には、自身で意図的に1/fゆらぎを作り出してみることをやってみてください。
簡単に作り出す方法として、1/fゆらぎのあるクラシック音楽や、自然を訪れてみる。さらに波や焚き火の動画も存在しますので、それらを活用するのが良いでしょう。
時には静かな部屋で、何にも邪魔されずに存分に1/fゆらぎの世界に浸ってみてはいかがでしょうか?
- 自然の中を散歩する機会を作る。
- 深呼吸を意識する。
- 夜、ろうそくをつけてみる。あかりを消すことで、その場の雰囲気はまるで変わります。火には充分注意して下さい。火の扱いを感じることもとてもいい機会です。
ゆらぎは至る所で体験できます。そもそも。私達の体は機械ではないのですからね。日常に十分なリラックスで明日の元気に繋げましょう。
コメント