HQ(人間性知能)の向上にはアートがいい

アート

ピアノの教育現場にいて今、痛感することは、これからの時代に必要なHQはアートに触れることで向上すると言うことです。

私には、IQ(知能指数)やEQ(心の知能指数)より、これからはHQ(人間性知能)の大切な時代がやってくると確信に近いものがあります、

今まで、特に子供の教育の場において高く評価されてきたIQ。 計算ができたり、暗算が早かったり、漢字の覚えが早かったり、ものをよく知っていたり、IQや偏差値が高い子供たちが評価されてきました。けれども、これらの能力はこれからはITやAIに、その能力をとって変わることになりつつあります。

さて、これからの社会では、どのような能力が必要とされていくのでしょうか。

HQはどう言うことを示す指数?

HQはHead Quartersの略ではありません。検索すると、上位にはこれが出てきますが、念の為全く関係ありません。

HQは Humanity / Hyper Quotientの略で、新しい知能指標で「人間性知能」と呼ばれるものを表します。

「人間性知能」は脳科学者の溝口俊之氏によると脳の中でも「前頭連合野」と呼ばれる領域が持つ人間らしさの知能のことです。前頭連合野の役割は、人間が本来持っている、言語、空間認識、論理、数学、音楽、絵画、身体運動に関する知能を総括するコントロールセンターのようなところです。

上記したそれぞれの知能が優れていても、例えばですがオーケストラで、それぞれのパートが上手でも指揮者の能力で全部のパートを上手く総括できるか、否かでそのオーケストラの方向性が決まってしまうと言うことなのです。

IQとEQとの違いは何?

IQは多くの方が聞いたことがある指標ですね。Intelligence Quotientと言って、HQに反して、「ある人の知能が同じ年齢の集団の中で、どこに位置するのか」を基準にします。多くは、知的障害者の療育手帳習得、就学時の健康診断、学習指導などに利用されています。

IQが示す能力は、その時々の状況に、どうのように迅速に対処できるか、と言う能力です。ただ、そこには社会性は含まれておらず、長いスタンスで人生を考えたときに「生きる力」とは結びつけにくいと考えられています。

EQは、IQに比べてあまり聞き慣れないのではないでしょうかEmotional Intelligence Quotient と言って心の知能指数を表します。

自分や他者の感情を感じ、理解する、自分の感情をコントロールする、といった心に関する管理能力と考えてください。心理学者の間では、知性を判別するIQ(知能指数)だけで人の知能を判別できない、と以前から問題視されていました。そこで、このHQを向上させることで、メンタルヘルスの問題を根本から解決できる、と注目されています

これからの社会とHQの必要性

HQはIQとEQに代わる指標とされていますが、その必要性はどこから来ているのでしょう。

脳科学の分野でも、とても重要視されていることにも影響しますが、HQは教育界でも注目されています。

ピアノの教育現場でもその重要性に気がつくことがしばしばです。

近年のピアノを弾く、というテクニック、技術の向上は極めて目覚ましいものがあります。難解な曲も、ミスタッチもなく、速いテンポで弾く若い世代のプレーヤーにはその進歩と、努力は素晴らしい、としか言葉がありません。

ですが、その正確さや、理解力に比べ、音楽がもたらす、プレーヤーの個性がうかがわれる演奏に出会うことが以前に比べて少なくなっているのです。プレーヤーの個性というのは、技術の信頼の上に、想像性の豊かなものであったり、感情に訴えるものであったり、余韻を残すものであったり、と、正確さや技巧を極める以上の何か、人間にしか創り上げることのできない何かを含んでいます。心に届くものを持っていると言うことです。

教育一般論で言うならば、読み、書き、計算が正確に素早くできるといった基礎学習は、これからはITやAIが代わりにできてしまうと言うことです。先生や、教育現場がただ与えるだけ、という一方通行の教育は、発見力や対応力や何かを作る力を養う機会は少ないので、色々な場面や事柄に遭遇した時に対応する力をつけることは難しいのです。

アートがHQを高める理由

特にピアノをお勧めするその理由は、HPの向上のためのさまざまな要因を学べるものだからです。

  • 五感をフルに使う
  • 適応能力を養える
  • 継続を学ぶことで、未来型学力を養うことができる
  • 創造性を習得することができる

教育評論家の尾木直樹氏はこのように言っています。

社会性や創造性、企画力、決断力などの能力に優れていて、相手の気持ちを汲んだ行動ができたり、諦めずに未来を切り拓く意志をもっていたりする。「未来型学力」とも言われていて、世界の教育者はこれを伸ばそうと言っているんです。

子供学びラボ

1.ピアノを弾くことは、聴覚、視覚、触覚をフルに使います。

指で鍵盤を触るタッチによって、音が変化します。ここですでに、触覚と聴覚が結びついている特別な知能を使うことがわかります。また、楽譜の音を読んで、ピアノの適切な位置の音を弾く、と言う作業は脳の、日常では使われない特別な部分を使います。

2.ピアニストは自宅にある自分の楽器を持ち歩くわけにはいきません。

音楽教室のピアノ、発表会場のピアノ、と言うように、その場その場にあるピアノや、ホールに合わせて適応しなければなりません。また、合奏となりますと、自分の音と他の演奏者との音のバランスを聞く、という適応性も求められるのです。

3.尾木氏の言葉にもあるように、諦めずに未来を切り開く意志を貫くための継続の習得も、毎日の積み重ねを要求される楽器演奏の習得は、とても有意義です。

4.そして、未来を切り開くとき、また適応性を求められるときに発揮できる能力は創造性です。その時に知恵を絞る、という発想の柔軟性も、アートと言った既成概念を離れての自己表現の訓練が役に立つことでしょう。

そして、その柔軟性は、自然というアートの宝庫で経験することができます。有名なフランスの作曲家ドビュッシーを始め、自然にインスピレーションを受け素晴らしい曲を残した作曲家達をみても、その繋がりを理解することは容易です。

AIやITの存在は、私たちの暮らしをより合理的にしてくれるでしょう。けれども私たち人間はまだまだできる素晴らしいことがたくさんあります。

アート。それは自己表現の訓練が、個性を見つけるための大事な鍵なのです。

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