ピアノは何歳から始めるのがいい?

アート

聴覚の形成

お母さんのお腹の中で、胎児の耳は16〜19週頃に外見上の形が出来上がります。ですが、内部はかなり複雑な構造をしているので、音の伝達が大人と同じような状態になるのはもう少し遅く、24〜25週にかけてです。これでもまだ、完成の状態ではなく、神経はまだ発達途上で、耳に入った音を「音」だと認識できるようになるにはまたさらに時間がかかります。

けれども、臨月の頃には聴覚はほとんど完成に近いとされています。そして生まれた後も2〜3歳頃まで発達を続けます。外耳に関しては、骨格の成長に伴って7歳頃まで変化します。

未発達のまま生まれてくる視覚と比べて、聴覚は胎児の時にすでにほとんど完成され、赤ちゃんはお腹から出てきます。

では、お腹の中ではどんな音が聞こえているのでしょう。

1番に聞こえるのは、お母さんの心音や、血流など、お母さんの身体の中の音です。そしてお母さんの声。この声は最も身近に聞こえる外の声。また、音楽やもちろんお父さんの声もしっかり届いています。その聞こえ方は、羊水の中で聴く音ですから、くぐもった、ザラついた音になるようです。

これらの音は、静かな海辺での波の打ち寄せる音に似ているそうです。

天才達は早熟とは限らない

天才は早熟、と言われていますが、満更嘘ではないようですが、だからといってガッカリすることもないようです。

早熟天才といえば、モーツアルトやシューベルト、メンデルゾーンの名前がすぐに上がることでしょう。10代で作曲、モーツアルトにあっては6歳から作曲、そして演奏活動をしていたわけですから、早熟天才型と言えるでしょうね。

この3人はいずれも家庭に音楽家、もしくは音楽をとても愛好する人がいる中で教育や影響を受けていました。

ですが、早熟天才ではない音楽家もいるのです。

イタリアの作曲家、ロッシーニは音楽の道に至るまで、紆余曲折したようです。幼少の頃は父親の投獄事件もありなかなか学校にも行こうとしなかったようですが、突如16歳くらいから爆進します。18歳でオペラを作曲。たちまちその才能を開花させました。16歳が遅咲きというのですからいやはやです。

環境による違いは大きい

まずは、音楽の環境が周りにあるか、ということがとても重要になります。聴覚をフルに使うアートですから、どんな音が自然に耳に入るかが大きく影響することも頷けます。小さな子供は、そういった環境を自分で選ぶことはできません。

聴覚は7歳まで変化していく過程で、4歳くらいまでに音楽に触れている環境の中で、絶対音感が育つ可能性が高いとされています。

絶対音感はなくてはならないものではありません。

絶対音感に対して相対音感のどちらかがあれば、音楽家としてなんら問題はないでしょう。

ですが、ピアノに関してはこの絶対音感の有益性を認められています。というのは、楽器の特性上、扱う音が多い点が挙げられます。

西洋音楽17世紀、バッハ以降の鍵盤楽曲の進化は素晴らしいものであり、メロディー、ハーモニー、リズムという音楽の全てを網羅しながら芸術の極みに至りました。こういった複雑さを弾きこなす上では、絶対音感、すなわち、聞いた音の名前がすぐにわかる能力は大変効率的なのです。

ピアノを始めるのは早ければ、早い方がいい?

絶対音感が育つトレーニングは確かに早ければ早い方がいいでしょう。ですがピアノという楽器の特性をすでにお話ししましたが、複雑さを持っているピアノ楽曲に、小さいうちに取り組むことは絶対的に必要ではありません。

その理由の一つは、手、あるいは身体の発育が大きく関わっています。

まだ、骨格も変化の途中ですし、手の大きさ、手の強さ(ここでは握力になります)が備わっていない時期に、無理矢理難しい曲を弾かせることは、身体の負担が大きく、後々治しにくい癖を生み出してしまうことにもなります。

では、その時期何を与えれば良いのでしょう。

7歳くらいまでは、無理のない曲を弾きながら、音楽本来のスキル、「音感」と「リズム」を楽しく習得することが大切です。

リズムは理屈ではなく、身体で感じ、覚えるものです。せっかく楽器を使いこなせる技術を持てたとしても音楽のイキイキした表情や、楽しいリズム、また、同じ踊りでもワルツとロンドでは違うリズムを感じ、表現することができることが、技術を超えたアートという領域に入ることなのです。

こうして、競争意識や完璧さを求めることより、イマジネーションや、音感を育て、最も基本的なものを楽しくインストールしておくことで、本格的にピアノを勉強し始めてからの成長のスピードはより確実なものとなります。

まとめ

始めるのは5歳くらいからで十分です。7歳から10歳までは、「音感」「リズム」を楽しく習得させることを優先する。もちろんお子さんによっては、早熟天才型の才能を発揮されるかもしれません。そういった場合は、指導者は細心の注意を払い、大切な芽を摘まないように指導しなければなりません。

あくまでもピアノは音楽を表現する道具です。

まずは、音楽を身体で感じることから始めることが、上達の最短距離なのです。

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